病気体験記

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悪性リンパ腫体験記

入院初期

いよいよ入院のときがやってきた。病院には縁がなく入院初体験だった私は、かつて祖母が入院していた頃(20年くらい前)の病院生活を想像していた。看護婦さんや担当医の態度は悪く、おそらく私なんかボコボコにされてしまうだろう、ああ、なんて可哀相な私!だが、実際に入院してみると、20年前とはえらく変わっていた。まず、看護婦さんたちが非常に優しく、かつ若くて(夜勤のある入院病棟は独身者が中心)キレイだった。特に下心があったわけではないが、彼女たちとの語らいは入院中の唯一の楽しみとなった(看護婦側が相当ウザがっていたのは間違いない)。また、前の総合病院で私を診てくださった先生が入院中の私の主治医となったのだが、主治医先生をはじめ多くの先生方が、質問すれば懇切丁寧に疑問にこたえてくれた。祖母が入院してた時代には、先生に治療方針を尋ねたり要求したりしたら、先生激怒というのが通例だったのだから、これも私にとっては有り難がった。

 入院後は、CT検査、ガリウムシンチ検査(微量の放射性物質を体内に注射すると、病巣にそれが集積する)、胃と大腸の内視鏡検査、骨髄穿刺検査(マルクともいう。ドイツ貨幣のマルクはdie Markで女性名詞、骨髄のマルクはdas Markで中性名詞らしい)を行った。大腸内視鏡検査は新人先生が行ったので(研修・指導を目的とする大学病院ではよくあること)カナリの激痛だったが、いろんな患者さんが激痛と表現するマルクは、部長先生のプロテクにより特に痛みもなく終わった。あとは、検査のため、かわいい看護婦さんに自分の大便を見せなければいけなかったのが、お年頃の男性としては悲しかったくらいか。検査の結果、喉の他に胸部、腹部に病巣が見つかり、私の病気は「B細胞型びまん性大細胞型非ホジキンリンパ腫3A期(中悪性度)」と確診された。
 治療法は、先生と話し合い、bi-weekly CHOP療法(8サイクル)を選択した。CHOP療法とは、シクロフォスファミド(エンドキサン)、塩酸ドキソルビシン(アドリアシン)、ビンクリスチン(オンコビン)、を1日目に2時間点滴、プレドニンを1〜5日目に経口投与する多剤併用療法で、悪性リンパ腫に対する標準的な治療法だ。bi-weekly CHOPとは、3週間隔で1サイクルを投与する標準的CHOPに対し、2週間隔 (bi-weekly)で1サイクルを投与していくもの。抗がん剤を投与すると、骨髄抑制といって一時的に白血球等が減少し、感染症のリスクが高まる。標準的CHOPではその数が自然に復活するまで3週の投与間隔をおくのだが、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子、白血球の数を増やす薬剤)を投与することにより、投与間隔を2週に短縮して、理論上の薬剤強度を1.5倍にするというのがbi-weekly CHOPである。どちらがより効果があるかはまだわかっていないが、初回治療が最も重要であり(初回治療以降はがん細胞に薬剤耐性がでてくる)、初回である程度強めの治療をやっておいたほうが良い、とのことだったので、bi-weekly CHOPを選択した。

 そして、治療が開始された。抗がん剤が投与されるとどういうことが起こりうるか、というのは、先生の説明や事前にインターネットで調べた資料(湘南鎌倉総合病院のHP「抗がん剤治療を受けるあなたへ」をプリントアウトして治療中参照していた。とても参考になった)でわかっていたので、あまり心配はなかった。また、私に付いていた実習中の医学生が、初回投与中はずっと傍にいていて雑談相手になってくれていたし、主治医先生も初回投与日は夜遅くまで病院に残っていてくれたので、心強かった。副作用は、点滴中はなんともなかったが、点滴終了後3時間くらいして全身の倦怠感、6時間くらいして吐き気があった。どちらもそれなりにしんどかったが、吐き気のほうはハードな飲み会の後のエンドレスな吐き気に比べれば、吐いてしまえば楽になるのでマシだった。

 病院の薬剤師さんによると、ひと昔前までは、抗がん剤を投与すると99%の患者さんがゲーゲー吐いていてすごかったらしいが、ここ5〜10年で良い制吐剤ができてからはそういうこともなくなったとのこと。ただ、個人差があり、私のようにナボパンやプリンペラン(ともに制吐剤)があれば大丈夫という人もいれば、一晩中ゲーゲーという人もいた。また、女性の患者さんたちは「生理に比べればマシ」「つわりに比べればマシ」という人も多かった。女性の方々は、毎月大変な経験をなさっているんですねえ、、、。

 初回治療の結果、喉のリンパ腫は消失したものの、胸部と腹部のリンパ腫に変化はなかった。初回治療から2週間ほど経ってから、副作用で髪の毛が抜け始め、他の体毛も続いた。治療前は、命が助かるのであれば脱毛くらい、、、と考えていたが、いざ脱毛が始まるとそれなりにショックだった。毎朝、コロコロ転がしてゴミをとるやつで、ベッド上の毛を掃除するのがめんどくさくなったので、看護婦さんに頼んでバリカンで徹底的に剃ってもらった。主治医も看護婦さんも異口同音に「治療が終われば必ず毛が生えてきますから安心してください」と励ましてくれ、部長先生は「やっと薬が効いてきたか」。アタマの形が良かったので、ハゲもなかなかかっこ良かったように思う(見舞い人からはラストエンペラーと言われた)。院内徘徊時にはバンダナを着用することにした。女性の患者さんが「オトコはハゲでもかまわないけど、女はハゲだとなんだか裸でいるような気分がして落ち着かないのよ」と語っていて、夏目雅子ひまわり基金が医療用カツラのレンタル事業をしている必要性が納得できた。

2008年04月28日 18時40分
体験日 : 2008年03月11日
治療状況 : 治療・入院時/治療
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