病気体験記

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悪性リンパ腫体験記

入院までの日々

まず、家にある『家庭の医学』みたいな本で、「悪性リンパ腫」の項目を調べた。項目に割かれた行数が少ない割には衝撃的な言葉が書いてあった。「ほとんど治らない」。寒すぎる。こうなったら自殺でもしたほうがよさそうだ。死ぬんなら多額の賠償金を請求される鉄道飛び込みとかはやめて、富士山の樹海にでも、、、いや待て、今では医学が進歩しているかもしれない。巻末を見たら、「昭和47年初版発行」。はやまるのは良くない。大いに救われた気持ちになり、最新の情報を求めてインターネットや本屋でいろいろ調べることにした。

 それからしばらくは、ひたすらインターネットや本屋や図書館で病気のことを調べまくった。そこでわかったのは、「悪性リンパ腫は、今ではかなり治る病気である」ということだった。特に勇気づけられたのは、あの『患者よガンと闘うな』(近藤誠著)の中で、「白血病や悪性リンパ腫などの血液疾患は、抗がん剤だけで治る数少ない疾患であり、治療成績も相当向上している」という内容が書かれてあったことであった。もし、害が多いといわれる抗がん剤治療を受けさせられそうになったときには、この本を根拠に抗がん剤を拒否しようと思っていたので、「むしろ使え」との内容には正直ガッカリしたが、反面なんとか希望がもててきたように思えた。

 やや話がそれるが、情報収集においてインターネットのもつ力はすごい。もちろん、その情報は玉石混交で、使い手の情報選択能力が要求されるところだが、知りたい情報知りたくない情報ほとんど全てを知ることができる。当時、検索サイトの「goo」で「悪性リンパ腫」「生存率」と検索語を入力して検索したところ、学会発表資料などが大量に検索にひっかかってきて、知りたくない(と当時は思っていた)情報まで知ることとなった。20世紀は知る権利が追求されたが、21世紀は知らない権利も追求されることになるのではなかろうか。
 ちなみに、最近はこのような「学会サイト」はパスワードによる入場制限があるところが増えて 、患者にとってあまりに刺激的な内容の情報が目に触れることは少なくなった。私なんかは怖いものみたさで、当時このような専門サイトの衝撃内容をみてはヒーヒー言っていたが(マゾですか)、知ることによる恐怖よりも知らないことの恐怖のほうが大きいように思う。

 その後、総合病院での担当科が、耳鼻科から血液内科へと変わることとなった。血液内科の先生は「私は○○大学病院から来ているので、今後はそこに移って治療に入りましょう」と言った。ジーンズをユニクロで買うか丸井で買うかのレベルではなく、コトはいわば「命の買物」である。どうするのが最も「お買い得」であるのかを判断しなければいけない。私は、ありったけの力をふりしぼり、これ以上ないというくらい鬼気迫る真剣な表情で(と自分では思っている)先生に質問した。

 「もし、先生がこの病気にかかったら、先生はどこの病院にかかりますか」「うーん…ガンセンターかな」おいおい、だったら私もガンセンターに紹介してよ!と思ったが、自分の病院に自信がなければ言えないセリフともいえる。逆に「ウチにまかせて」などと言ってしまうタイプの先生のほうが危ういように感じた。その点、この先生は非常に率直で、信頼できる先生であるように思えた。私は自分の母校の大学病院への転院も考えていたのだが、この先生にお任せするのが最良と判断し、この先生の大学病院へと転院することとなった。

 転院後、転院先の大学病院の血液内科の診療部長先生の診察を受けた。血液内科は、悪性リンパ腫のほか白血病や再生不良性貧血など、放置すれば命に関わる疾患が多く、比較的ハードな部門といえる。そのせいか、先生方は冷静な感じの方が多かったが、長年この部門で多くの患者を診てきたであろうこの先生は、キツイこともビシビシ言ってきた。先生はメモ用紙に「生存曲線」を書きながら、「おおまかにいって、治療で寛解(症状が消えること)になる方が7割、その内7割の方が5年以上再発しないといった感じです」。つまり0.7×0.7=0.49(49%)の患者が治癒するということらしい。まさに丁半博打(2分の1の確率)だ。インターネットで調べて大体見当はついていたが、いざ医者の口から直接聞くとショックを受けるものだ

 「厳しいですね」と言うと先生は「厳しい?あなたねえ、肝炎とか心筋梗塞とか、これより(治癒率が)低い疾患はいっぱいあるんだから」と怒られてしまった。近年の血液疾患の治癒率の向上は目覚しく、治癒率が低かった時代から治療にあたってきた先生にしてみれば、この数字は高いものであり、「贅沢を言うな」という心境なのであろう。ただ、当時は先生の言い方にかなり頭にきたので、「ちきしょ〜、言いたい放題言いやがって、絶対治してやる」と逆説的な意味で闘志をかきたてられることとなった。

2008年04月28日 18時36分
体験日 : 2008年03月11日
治療状況 : 診断後/診断
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