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『知りたがりやのガン患者』(農山漁村文化協会 1996/12)
種村 エイ子さん(胃がん)
進行性胃がんのため胃全摘手術を受け、5年生存率20%と告げられてから、14年が経ちました。当時、「究極のダイエットをした」、と喜んだのですが、体重はすっかり元に戻りました。「がんサバイバー(体験者)」を名乗るのも躊躇するような健康を取り戻し、大学教員のかたわら、全国の学校を訪問し、「いのちの授業」を続けています。
当時の私は、入院前夜に「がんの告知はしてほしくない」と家族に依頼するほどの恐がりでした。病気は医療者が見つけて治してくれると信じていました。
しかし、術後10日ほどして受けた告知のころから俄然、「知りたがりや」に変身しました。「胃切除後の食生活は? 」「社会復帰は大丈夫? 」「抗がん剤の効果は? 」さまざまな疑問が去来しても、病院に患者図書室はなく、公共図書館からのサービスもありません。元来、私はライブラリアン。人間が人生の主人公として生きていくために「いつでも、誰にでも、どこでも」必要な情報を伝える図書館が欠かせないとの信念をもっていました。
退院後必死の思いで図書館に通い、手当たり次第に情報を求めて、ホスピス医療に情熱を燃やすひとりの地元の医師に出会いました。その医師は、「医療の主人公は患者自身、自分の受ける医療は本人が選ぶべきだ」と言うのです。患者自身の選択を手助けする情報提供は惜しまないと、受診のたびにさまざまな文献が手渡されました。ほかの患者や家族との交流の機会も生まれました。
そんなとき、地元のテレビ局が、ホスピス医療をテーマにした番組を制作していました。意欲的なディレクターから、私にもインタビューの依頼がありました。当時の私は、職場や友人にがん患者であることを公表できないでいました。それは、最初の主治医が「がんであることを他人に知らせないほうがいい、あなたががんだとわかると周りが気を使いすぎる」とアドバイスしたことも一因ですが、私自身が「同情を受けたくない」と考えていたからでした。
しかし、ホスピスづくりに役立つテレビ番組には協力したい。でも、「あの人、がんなんだって」、という興味本位の情報だけが流れるのは困る。私の思いを伝えるには、やはり本しかない。そんな思いで、執筆を始めたのが『知りたがりやのガン患者』です。同じ頃、図書館で目にとまったのが『性の授業死の授業』(金森俊朗・村井淳志著 教育史料出版会)で、この本がきっかけで始めたのが「いのちの授業」なのです。
『知りたがりやのがん患者』を書いたことで、私は、友人や母にきちんとがんであることを伝えることができました。同じがん体験者やがん患者を家族にもつ方からの手紙は、数百通にもなりました。「私も、知りたがりやです。知りたがるのは悪いことではないとわかりました」「がんになった人の気持ちを理解するのに役立ちました」などなど。出版がきっかけになって、『種まく子どもたち』の佐藤律子さんや『いのちの授業をもういちど』の山田泉さんなど、出会いもたくさんありました。今でも、がんがくれたかけがえのない贈り物だと思っています。


















