『種まく子供たち』(ポプラ社 2001/04)

小俣 智子さん(小児がん)

小俣智子さんは、13歳(中学1年)で急性リンパ性白血病を発症しました。大学1年で治療を終え、医療ソーシャルワーカーの道を志します。大学院では病体験を持つ当事者グループについて研究し、その後、乳ガン経験者の会「Fellow Tomorrow」のリーダーを務めます。10数年、医療ソーシャルワーカーとして勤めた後、現在は大学の教員として福祉を志す学生の指導に当たっています。 種まく子どもたちを書いてから7年―――。あれからの小俣さんはどうしているのでしょう。あとがきの続きでは、そんな小俣さんに近況をつづっていただきました。

「種まく子供たち」は、小児がん活動を始めて7年目に書きました。そして2001年に出版されてからほぼ7年。今回、その「続き」を書く機会に恵まれました。その後も小児がん活動を続け、15年目を迎えようとしています。

「種まく子供たち」が出版されてからしばらくして、あることに気付きました。私が発病した13歳のときの母の年齢を超えていたのです。発病してから20年経っていました。その長さに驚き、感謝し、20周年記念をお祝いし、改めて「さて、小児がん活動を続けるべきか」と悩みました。病気だった事実はそのまま私の中にあるけれど、小児がんの経験を持つ当事者という立場からは遠くなっていたからでした。これまでを振り返り、この先自分に何ができるのか考え、結論に至るまでに2年かかりました。

それまでの活動から、小児がんの影響により残った障害や、新たに発生した病気に悩み、社会的自立が難しい仲間が多くいることを知りました。また、活動に加わることすら、仲間がいることすら知らずに苦しんでいる人も多くいるはずだということにも気付きました。さらに、各領域(家族、医療、教育、地域など)で小児がん経験者に対する研究は行なわれていても、横のつながりがまだ充分ではないという問題整理もできました。

考え抜いた結果、自分のこれまでの経験を活かして、小児がんの理解を中心とした全国規模での活動を展開しようと考えました。そして、3年前に立ち上げたのが、「小児がんネットワークMN(みんななかま)プロジェクト」です。

種まく子供たち―小児ガンを体験した七人の物語
  • 『種まく子供たち』
  • 佐藤 律子 編集
  • 出版社:ポプラ社
  • 発売日:2001/04
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そうは言っても当初は、何から始めればいいのか方向が定まりませんでした。「人」に恵まれている私は、立ち上げスタッフと強力なサポーターの助言と協力を得て、あるサポーターが運営しているNPO法人の事務所に居候させてもらうことになりました。妹がフリーでパソコン関係の仕事をしていたこともあり、ホームページの立ち上げをお願いし…と、多くの「人」に支えられて再び新たな活動をスタートすることとなりました。休日を利用し「出前講演」と称して各地に出向いたり、社会へのアピールとして小児がんのシンボル「ゴールドリボン」を掲げ、年1回イベントを開催しています。5年目に突入し、サポーターも400人を超えました。

私は病院のソーシャルワーカーとして10数年勤めていましたが、MNプロジェクトの立ち上げを機に退職し、現在は大学で社会福祉を教える仕事をしています。今後は小児がん体験を持つ研究者として、小児がんの理解を深める調査・研究活動にも力を入れたいと思っています。大学での教育と研究、小児がん活動と充実した日々を過ごしています。

びっくりしたこともありました。2007年に乳がんが見つかったのです。発症してから25年が経っていますが、これも「晩期後遺症」と呼ばれるもののひとつなのかもしれません。小児がんは治療中だけではなく、大人になってから問題が発生することもあります。

でも、私の人生は小児がん抜きには語れません。小児がんはたくさんの涙と同時に、いまも私にたくさんの宝物を与え続けてくれています。

小俣 智子 さん

小俣 智子(おまた・ともこ)

武蔵野大学人間関係学部社会福祉学科専任講師
小児がんネットワーク『MN(みんななかま)プロジェクト』代表

1991年、淑徳大学修士課程修了後、横浜の総合病院にて約12年間ソーシャルワーカーとして勤務。
現在、武蔵野大学人間関係学部社会福祉学科専任講師。研究テーマはセルフヘルプ・グループである。
本業のかたわら、13歳で発症、7年間闘病した小児がんの経験を生かし、小児がんに関係する活動を1991年より続けている。
3年前に立ち上げた小児がんネットワークMN(みんななかま)プロジェクトの代表を務め、成人した小児がん経験者へのサポート、社会への小児がん理解を目的に出前講演や、啓発イベントなどを企画運営している。
著書に「種まく子供たち 小児ガンを体験した七人の物語」(佐藤律子編、ポプラ社)、「仲間と。がんと向きあう子供たち」(がんの子供を守る会・フェロー・トゥモロー編、岩崎書店)がある。(いずれも共著)

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