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『東京タワーに灯がともる』(新風舎 1997/05)
内田スミス あゆみさん(脳腫瘍)
7ヶ月間の闘病を終え、実家に戻ってきた私を待っていたのは、深い『孤独』と『喪失感』でした。脳腫瘍とくも膜下出血を併発した私は、生死の間を彷徨いながら闘病を続け、後遺症を残して病院を退院しました。退院当時は、病気に対する怒り、再発の不安、後遺症を抱えての社会復帰、といった課題が一気に押し寄せ、私は、こころを閉ざしたまま日々を過ごしていたのです。そんな自分を癒す唯一の時間、それが文章を書くときでした。誰に言われるでもなく、私は病気の経緯、入院生活、当時の思いを自然に書き始めていました。そのときの私には、「闘病記を書く」という意識はなく、文字を通して、自分の内側の膿を吐き出そうとしていたのだと思います。
縁あって、私の書いた原稿が小さな出版社の眼に留まり、一冊の本『東京タワーに灯がともる』という形になりました。この本を多くの方に読んでいただくことができ、自分のその後に光を射していただいたように思っています。当時の主治医は「いままで患者の気持ちや考えを学ぶ機会がありませんでしたが、とても勉強になりました。医局で多くの医師にこの本を読ませています。」と本の感想を話してくれました。また、いまは亡き松田道雄先生(医師で作家)は、「あなたは将来、社会にとって何か大切なことをしてくれる人です」と励ましの言葉(?)を送ってくれました。この出版を通し、「患者の気持ちや考えを、多くの医療者が知りたいと考えている」、ということを学びました。
闘病記を出版した後、わたしは医療者や医学生の研修を支援する活動を始めました。10年以上に渡る活動の中で、医療者と患者のコミュニケーション問題を解決するには、双方の努力が必要である、という思いが一層強くなりました。そこで、昨年は一般の方向けの実用書『入院、通院&お見舞い いざというときに読む本』(主婦の友社)を出版しました。これは、患者、および患者の家族が、どのように病気と向き合い、医療者とコミュニケーションをはかっていくか、患者の視点で解説を試みた本です。病気とは無関係と思っていた私が、闘病を経て、患者の立場を経験し、その後多くの医療者や患者経験者と対話しながら学んできたことを、一冊の本にまとめることができました。『東京タワーに灯がともる(闘病記)』は、自分の傷と向き合うための出版でしたが、今回出版した『入院 通院&お見舞いガイド』は、患者体験を能動的に社会へフィードバックしようとする出版だと思っています。
いま続けている医療に関する活動を通し、一般市民の視点を大切にして、日本の医療のいまと将来を考え続けたいと思っています。


















