『種まく子供たち』(ポプラ社 2001/04)

工藤 彩子さん(小児がん・患児の母)

工藤育ちゃんは、2歳のとき、急性リンパ性白血病を発症しました。1年に及ぶ入退院を繰り返し、さらに1年以上の通院を経て、小学校に入学します。
母親の彩子さんが「種まく子供たち」を書いてから7年―――。育ちゃんは立派な中学生になりました。
あれからの育ちゃんはどうしているのでしょう。大きくなった育ちゃんは病気のことをどう受け止めているのでしょう。「あとがき」の続きでは、母親の彩子さんに近況をつづっていただきました。

娘、育への告知は小学2年のとき。定期受診で異常値が検出され精査しなくてはならなくなったときのことでした。
「どうしていつも病院に行くの? 検査しなくてはいけないの? 」
「小さい頃あなたは白血病という病気にかかったの。血液の中にできる癌だったの。」
「うそだぁ。」
「本当だよ。お父さんにも聞いてみたら。」
「お父さん、本当? 」
「本当だよ。」

それが事実だということを悟ったようでした。

告知するか否かは社会生活を営めるようになった頃からいつも頭をよぎっていた問題でした。どれだけショックを受けるだろう。いつも死の恐怖に怯えて生きていくことになりはしないか。そんな心配と同時に、事実と向き合っていかなくてはならないのは彼女自身であること。それは親であっても立ち入ることができない。そして、よりよい親子関係を築くために隠し事はしないほうがいい。そんな気持ちが私の中にありました。育と共にありのままを受け入れ生きていく。そう結論が出るまでに長い時間がかかったように思います。

その後、育が病気についてどう考えているのか聞いたことはありませんし、自ら話すこともありません。しかし、二度と会うことのできないお友達からのプレゼントを大切にしている姿を見ると、共に生きているのだと感じることがあります。

小学校の頃は、季節の変わり目にはよく熱を出しました。帯状疱疹にも何度か罹りました。骨折も数回。跳び箱に手をついただけで骨がグニャリなんてこともありました。しかし毎日の生活はとても楽しいもののようです。門限破りをしでかすこともしばしば…。

中学生になり運動部に入ってからは体力もつき、校内のマラソン大会では上位に入るほど力をつけていきました。

種まく子供たち―小児ガンを体験した七人の物語
  • 『種まく子どもたち』
  • 佐藤 律子編
  • 出版社:ポプラ社
  • 発売日:2001/04
  • 詳細を見る

心配していた抗がん剤による影響もいまのところないようです。生えなくなってしまった部分の毛髪は髪を伸ばして隠しています。

今後の不安としては子供を生むことができるかということでしょうか。腹膜炎によりお腹の中は癒着状態にあることでしょう。それだけでも不妊の原因となるのに、抗がん剤による卵巣へのダメージも懸念されます。近年、治療者を対象に卵子凍結が可能となってきているのでそれに期待を寄せています。

「幸せか否かはその境遇で判断するものではなく、いかに幸せに生きようとしたかにあるのだ」という言葉が私は好きです。育もこれからの人生、耐えられないほど辛い出来事があるかもしれません。けれども恐れることなく、幸せであろうと努力してもらいたいと思っています。

工藤 彩子(くどう・あやこ)

娘の育ちゃんが生後2年で急性リンパ性白血病を発症。
看護師として勤務した経験と闘病経験を持つ母親として、同じ悩みを抱える親子の役に立ちたいと考えている。

1
Member_bn_1

ご意見ご感想をお聞かせください ライフパレットは、みんなでつくっていく、患者コミュニティサイトです。ご意見ご感想をフォームにご入力の上送信ボタンを押してください。