星野さんの質問箱(闘病記Q&A)

星野店主に聞きました! 闘病記についてのアレコレ。

闘病記といえばやはりこの人、古書店パラメディカの星野店主に登場していただかなければ始まりません。ライフパレットが星野店主に突撃Q&Aを試みました♪

Qそもそも闘病記の定義は?

Aどこまでを闘病記に含めるのかという定義は複雑かつ曖昧なので、「患者本人が書いたもののみ」と限定する意見もありますが、パラメディカでは、「病気に向き合った人の記録」と幅広く捉えています。患者本人が書いたものだけでなく、家族が書いたもの、第三者が代理で書いたもの、さらには実体験に基づいたフィクションまで…。
患者が病気に向き合ったときに参考になる本であれば闘病記に入れてよいのではと考えています。ただし、特定の病院のPRや健康食品の宣伝になっているようなものは極力省くようにしています(これが意外と少なくない!)。

Q闘病記の読者対象は?

A主に初心者ではないでしょうか。
医者やベテランの患者なら知っている病気に関する常識が初心者にはありません。たとえば、ある闘病記に、患者が医者に卵巣腫瘍と言われてホッとするんですが、別の医師から卵巣がんだと言われて、パニックになるというシーンがありました。
初心者の患者にはそういうことがある。初心者がとりあえずその病気に対するイメージや常識を仕入れるのに便利なのが闘病記です。
専門書にも基礎知識は書いてありますが、わかっている人が書いて、わかっている人が読む本ですから、初心者の患者が必要な情報にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

Q闘病記は賢い患者への第一歩?

A釈迦の言葉に「生老病死」とありますが、「病」に出会ったときにその人が何をしたか、いろいろな選択がある中で何をしたかという本があると参考になります。全くお手本がないとパニックになってしまいますが、闘病記を読めば、その病気に対する大体のイメージをつかむことができるし、冷静に状況を判断する材料になります。
たとえば、地方の人がALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹ると、病院を5箇所ほど回って、3~4ヶ月かかってようやく病名が診断されるというような、日本の医療の現状が闘病記には書かれている。すると、最初に行った病院では病名がわからなかったと怒る患者もいますが、それもやむをえない状況なのだということがわかってきます。医者が言わない情報が隠されているんですね。
ただ医者に依存するのではない、病気に向かう基本的な姿勢みたいなものができてきます。

Q闘病記を読む上での注意点は?

A3冊読めとよくいいます。
何通りかの在り方を知ることで、自分の在り方を模索することができます。1冊だけ読むのは危険かもしれません。健康食品の宣伝など信憑性が疑われるものも少なくないし、自身の余命が予測できるなどショックを受ける内容ももちろんありますが、事実を受け止めるという意味でも闘病記は有益です。
ただし、手術や抗がん剤の情報などは日々進歩しているため、半年前に出版されたものでも役に立ちません。また、自分のやり方としてどれを選ぶかは本人の問題になってきます。反面教師も含めて、判断材料といえるでしょう。

Q患者さんでない人も対象?

A患者さんの気持ちを知る上でも、闘病記が役に立ちます。これも専門書ではわからないことですからね。
医療専門職の新人も病気の人に向かう前に闘病記を読んでみると、患者さんとの付き合い方がわかってきます。それに、病や死に向かい合う心構えは、本当は健康な人間にとっても必要なはずです。

Q闘病記を分類するときに大変なことは?

A図書館で通常使われる十進分類は、昔の価値観でできているので、闘病記にはあまり適しない面があります。
たとえば、十進分類だと看護関係の本は医学の分類の端に置かれてしまいます。一方、看護のほうでは医学に対して、大項目として並ぶ看護学をつくってほしい。看護協会と図書館協会の闘いです(笑)
また、闘病記というのは、基本的にはエッセイですが、小説まがいの闘病記というものがあって小説に入ったり、医学のところに入ったり、ドキュメンタリーに入ったり、本があちこちに散らばってしまうという問題がありますね。

Q病気別に分類するのが一般的?

Aそうですね。病名別のあいうえお順がわかりやすいと思いますが、患者数の多い疾患に関しては、闘病記を年齢・性別・職業・治療を受けた病院、既婚未婚、子供のあるなし、などによって分類しようという試みもあります。
私も参加している“健康情報棚プロジェクト”が目指しているのは、未婚の母の闘病記というように横断的に検索できるようなデータベースです。

健康情報棚プロジェクト
東京医科歯科大学図書館の石井保志さん主宰のプロジェクト。健康、病気に関する文献や情報の探し方と場の提供、その啓蒙活動を盛んに行っている。

Qどんな人が闘病記を書く?

A闘病記を読んでいると気付くことですが、闘病記の著者自身が闘病記を読みふけったという記述がよく出てきます。病気がひと段落したときに、いろいろ読んだけれども自分の立場はこうだったということを書き残しておきたいのですね。
現在の闘病記は後輩患者、同じ病気の人たちへのメッセージが強い。昔は家族への伝言の意味がありました。母親が若くして病気になったが、子どもたちが幼くてまだわからないから成人したときに読んでもらいたいというように、家族へ向けてのメッセージでした。いまはわりと同じ病気の患者にこれだけは知っておいたほうがいいよ、こんな選択肢もあるらしい、ということを書き残したいというものに変わってきています。
いろいろな治療法が出てきて、選択肢も多くなってきたことから、患者も自分で調べなくてはならない、自立した患者にならなくてはならないという意識がでてきたことに関連しているのではないかと思います。

Q闘病記を集めるきっかけは?

Aきっかけはうちの奥さんの乳がん。告知を受け、闘病記を探しましたが、なかなか見つからない。
困っているときに、たまたま本屋で千葉敦子さんの乳がんの闘病記を見つけましたが、これは参考にならないと思いました。なぜかって、彼女は主にNYで活躍するジャーナリスト。一方、妻は犬の散歩とおいしいものを食べることが好きな主婦。平凡な主婦の闘病記を探しましたが、見つけることができないままに、妻は他界しました。
その後勤務先を退職、1年間何もしないでいようと決意をしたものの、もともとモーレツサラリーマンでしたから働き癖がついていて、何もしないで家にいることができない。そこで、気になっていた闘病記を探す方法はないかと、まずは全国古書店地図帳を買って、首都圏の古書店を巡り始めました。

Q闘病記を集める古書店長としての悩みは?

A偶然に頼って本を集めているので、1冊しかないものを売ると、また同じものを集めるのが大変です。
患者さんならば仕方がないけれど、図書館に置きたいとか研究用の注文が入ると、売るのを渋ろうかと思うくらいで(笑)コレクターだから本当は売りたくないんです(笑)まずはアマゾンで買ってね、と。
でも、うちにしかないものもあるんです。全国で100冊しか出まわらなかったような本もありますし、告別式のときに配ったものらしい闘病記も。

Q主にどこで闘病記を手に入れているの??

A新古書店ブックオフの105円コーナー(笑)。一年365日中、360日はブックオフにいます(笑)。
都内はもちろん、埼玉、千葉、神奈川…。古書店巡りを始めた頃、郊外に行くとブックオフがあることに気付いて、そこで闘病記が結構見つかったんですね。
神田にはあまりないけれど、ブックオフにはある。なぜかというと、有名な作家の本は値段が高くなりますが、自費出版が多い闘病記は基本的に老舗の古書店はほしがらない。 闘病記を読むのは文学愛好家ではなくて患者だけですから。

Qおすすめのブックオフは?

A五反田店、新宿三丁目店、新大久保店あたりでしょうか。
10年前と比べると、闘病記は集め尽くしたようでいて、いまでも年間百冊以上は初めて見る闘病記に出くわします…。いずれにせよ、ブックオフがなかったら、うちは成り立っていません(笑)
ちなみに、ブックオフはスクラップ&ビルドなので、何度も通ったのになくなった店舗がかなりあります。原宿店が閉店したのはショックでした。

以下、ブックオフ談義が延々と続く・・・(笑)
星野店主は、闘病記コレクターならぬブックオフ博士でもあったのでした。ブックオフのことなら星野店主に聞け!ではなくて・・・闘病記のことなら、星野店主へ。
古書店パラメディカには、2000冊以上の闘病記が揃っています。

星野 史雄 店主

星野 史雄 (ほしの・ふみお)

古書店「パラメディカ」店主

1952年、秋田県生まれ。
1976年、早稲田大学中国文学科卒業。1980年、同大学大学院修士課程修了。
慶應義塾大学斯道文庫嘱託などを経て、1984年から1997年まで代々木ゼミナール勤務。妻・光子の乳がんによる死(享年44歳)を転機に同予備校を退職。1998年に患者のためのオンライン古書店パラメディカを開店。病名から検索出来る闘病記リストの作成を続け、現在、闘病記は2,000タイトル、医療関連書も含めると12,000冊を越える書籍が書店に並ぶ。2000年からは東京家政大学非常勤講師として学生や社会人に、生きるための「情報検索」術を教えている。

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