がんになった医師が語る、病気体験を書くことの効用
病気体験を書くことがもたらしてくれたものとは?
『東大のがん治療医が癌になって』の著者でもある、東京大学医学部付属病院の加藤先生にお話を伺いました。
加藤大基先生が話す、書くことの効用
2006年4月、当時まだ34歳。肺がん発症。あまりにも早い、がんの訪れだった。放射線治療医として勤務していた東大病院を退職して1年足らず、患者として戻ることになろうとは夢にも思っていなかった。
手術から4日後、元上司だった中川恵一先生(『がんのひみつ』の著者としてもおなじみ)の第一声は「意外に元気そうだな」。「手は動かせるな」との言葉に首をかしげるも、つまりはパソコンを使えるかどうかという意味。病室へやってきたのは、病気体験を書くことを勧めるためだった。後日、病室に届けられたパソコンを前にいざ書き始めると、思索する考えがまとまっていく。率直な思いを存分に書き綴ることで、ざわざわと振幅の激しかった感情が落ち着きを取り戻していった。闘病記を書くことは、漠然とした考えをまとめ、気持ちの整理をすること、そして記録という意味でも非常に有用だと加藤先生。
月日が経つとどうしても記憶はあいまいになる。日が浅いうちに記しておくことで、のちに読み返したときに、記録として役に立つだけでなく、当時抱いていた思いが蘇り、気持ちを新たにすることができる。「生きている時間には制限がある」。当たり前のことだが忘れがちなこの事実を改めて思い出させてくれる。
こうして生まれた『東大のがん治療医が癌になって』だが、本を出版したことで、テレビや新聞などの取材を受けるようになったり、死生学研究のためにまた東大病院で勤務することになったりと、新たな展開もあった。だが、それ以上に、連絡が途絶えがちだった旧友たちとの再会のきっかけが与えられたことに感謝しているという加藤先生の言葉からは、その人柄がうかがい知れる。加藤先生のこんな言葉が印象に残った。「ひとことでがんといっても、幅広い。たとえば同じ肺がんなら肺がんでも、ステージや年齢によっても全く病気体験は異なる。だから、疾患別に、いろいろな人の闘病記を集めて、1冊の本にできたらよいかもしれませんね」。




















