エッセイスト 岸本葉子さんが語る、闘病記のこと

凛とした知性を感じさせるエッセイスト岸本葉子さん。彼女が虫垂がんを告知されたのは2001年。以来、彼女のエッセイには、「がん」という題材が加わった。病気体験をつづることは彼女にとって一体どんな意味があるのだろう。6月のある日、梅雨を忘れさせる快晴の午後、お話を伺った。

がんもひとつのライフイベント。特別というわけではないんです

岸本葉子さん

その時々によっても違いますが、病気について感じたことや考えたことを書いて整理することで、自分にとっての課題がより明確になる感じがあります。がんになる前から、たとえば、‘30代に入る’とか‘40代を迎える’とか、‘転職をする’とか‘マンションを買う’とか、ライフイベントについての日常エッセイを書いてきました。自分としては、ことさらにがんについて闘病記を書こうというよりは、いままでのようにライフイベントを書く、それがたまたま今回はがんという題材になったという位置付けですね。

岸本さんのつづるがんについての体験は、驚くほどクールな視点で貫かれている。これは岸本さんのほかのエッセイにも共通する点だが、だからこそ、病気を体験していない読者にも共感できる部分が少なくない。

これはほかの方の本を読んで学び、自分で書くときも心がけていることですが、なんらかの客観性と普遍性が必要だという気がします。著者にとっては、痛みや苦しみが真実だったとしても、読者はいま現在、痛くも苦しくもないわけです。一度自分の状況や考えを客観視して、それを言葉にしていくことで、現在同じ状況にいない人とでも共有することのできる普遍性が生まれてくるのだと思います。

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