『胃がん』
星野店主のおすすめ闘病記
-蔵書数1万2千冊の闘病記専門古書店「パラメディカ」店主が選ぶ-
『いのちに限りが見えたとき 夫と「癌」を生きて』
1987年春、カリフォルニア大学教授で脳腫瘍の権威・星野孝夫氏が一時帰国中、研究先の国立がんセンター中央病院でボールマン2型の胃がんと診断され、手術を受ける。これは6年後の93年12月に55歳で亡くなられるまでを、妻の視点で振り返った闘病記録。手術した年の夏、米国に戻った夫妻は中華料理店で銀婚式を祝う。現地の中華料理店では食事の最後に、占いが印刷されたフォーチュンクッキーが出てくる。孝夫氏のクッキーには、なぜか紙片が入っていなかった。「僕には、未来がないっていうことだな」とつぶやく場面が、それからの過酷な闘病生活を予感させて印象的だ。孝夫氏が死の直前に初代会長を務めた日本脳腫瘍カンファランスは、日本脳腫瘍学会に発展している。
『知りたがりやのガン患者』
著者は1946年生まれ、京都大学文学部卒、鹿児島国際大学短期大学部教授(図書館学)。1994年1月、種村さんは進行性胃がんと診断される。病期(ステージ)Ⅲ、がんは胃の外壁・漿膜を突き破る寸前で、全摘手術を受けるが、術前・術後の情報を得る手段は「本」だった。全身麻酔で手術を受ける前に頭をよぎったのは渡辺淳一の小説「麻酔」。術後に読んだのは「胃を切った仲間たち」(桐書房)。抗がん剤の副作用に苦しんだ際は竹中文良医師や、高橋ユリカさんの闘病記を読んでいる。「知りたい、でも知れば知るほど不安になる」、そんなジレンマを解決してくれたのは、さらに「知る」ことだった。大学教授(哲学)である夫・種村完司氏がチラホラ登場し、エイ子さんとのやり取りが微笑ましい。
『吾輩はがんである』
著者は1957年生まれの落語家。1996年12月にステージⅢbの進行性胃がんと診断され、翌年1月に胃と脾臓(ひぞう)を全摘出、膵臓を半分摘出する手術を受ける。破滅型天才芸人の初代桂春団治を崇拝していたという小松師匠は、自身も放蕩三昧の日々を送っていた。しかし「人生のエンドマークをつきつけられ」、妻やふたりの幼い子どもたちのため「父親として最後くらいは立派に生きた」ことを見せようと、日本列島徒歩縦断の旅に出る。その後、胃全摘の後遺症(ダンピング症)を恐れながらの落語独演会、ニュージーランドでの英語落語、岡山大学での講演、定時制高校への入学と、次々に新しいことに挑戦していく。無謀なところはあるが、“いきがい療法”の実践例として笑って泣ける本。






















