患者に問う、医療

竜 崇正先生
前・千葉県がんセンター センター長

千葉県がんセンター2Fのセンター長室を訪ねると、室内には何台ものパソコンが並ぶ。メール用、手術の準備用…センター長として多忙を極めている竜先生の日常が垣間見える。誤解を招くことも恐れない語気の強さに圧倒されるも、根底にあるのは日本の医療がおかれている現状をなんとかしたい、患者と一緒に医療を変えていきたいという、一人の医療者としての切実な思いにほかならない。

日本の医療は世界一

竜 崇正 先生

第一に、私は日本の医療は世界一だと思っているんです。
世界一安全で、世界一高いレベルを持っている。その上、世界一安い。国民皆保険でどこでも同じ医療が受けられる、世界に類を見ない素晴らしい医療システムです。しかも、自分でいうのもなんですが、我々医療者は金に転ばず、世界のレベルからいえば相当に低い年収で、国民の健康・福祉のために貢献しようと高い意欲があります。これも世界に類を見ないものだと思います。先輩もそうでしたし、自分もそうやってきましたが、家で食事をすることもなく、土日も病院にいるという生活を繰り返してきたわけです。
その世界一の医療が昨今の医療不信によって崩壊させられようとしている。これには市場原理も入っている。このことに非常な危機感を抱いています。日本の国民は本当にこれでよいのだろうかと。

確かにがんは治るようになりました。その結果何が起きてきたかというと、治った患者さんは不安を募らせるようになった。治らない場合でも、昔は手の尽くしようがなかったのが、抗がん剤もあれば放射線もあって、いろいろな治療法により延命ができるようになりました。
ところが、紛いものの治療も含めて、情報化社会の中で情報が錯綜しています。治った患者さんは再発の不安に苛まされ、治らない患者さんは治らないまでも延命できて、よりよい時間を持つことができたにもかかわらず、治療に右往左往している。治療をした意味がないという言い方は大げさですが、生命の一番重要なときであるのに、その人にとって意味のない時間を過ごされているのではないかという気がしてならない。そのことに対して、私たち医療者はもったいないことであると同時に虚しさというのを感じています。

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