患者さんと医療者の懸け橋になりたい

川口恭さん
ロハス・メディカル発行人

首都圏にお住まいで病院へ寄られたことのある方は、こんな冊子を見たことありませんか?

ロハス・メディカル 2008年9月号 プレイモービルのキャラクターが並んだ可愛い表紙に、「はっ」と目を引くキャッチコピーが並んでいて、思わず手に取られた方も多いのではないでしょうか。
この冊子は「ロハス・メディカル」というフリーペーパー。首都圏の基幹病院130カ所以上へ配置されています。病院の待合室にて配布することをコンセプトにつくられている非常にユニークなフリーペーパーで、病気についての話題から最新の医療問題まで、患者としていま知っておくべき内容が豊富に紹介されています。このフリーペーパーの発行人である川口恭さんをお招きしていまの医療についてお話しをしていただきました。

「ロハス・メディカル」を創刊しようと思われたきっかけは何ですか?

実は偶然なのです(笑)と言ってしまいますと身も蓋もないので、経緯を順序立ててお話しさせていただきます。
もともと私は朝日新聞の記者をやっていました。社内ベンチャー制度を利用して若者向けの『seven』という新聞をつくったり、土曜版『be』の創刊に携わったりと、当時は比較的、新しい企画の立ち上げに関わっていることが多かったと思います。ただ、その過程で、大きな会社特有の足の引っ張り合いというか、言動と行動の不一致というか、すごく嫌なものも見てしまいまして、すっきりしないまま仕事をしていました。
そして、『be』が軌道に乗ったころ、父親を癌で亡くしました。
それがきっかけで、自分は何をやっているのだろうか、やりたいことをやらずに何が人生だ!という思いに至りまして、一念発起、具体的には何をするとも決めないままでしたが“自分自身でメディアを作る”とだけ決めて会社を辞めてしまいました。

これからどうしようかと考えていたら、偶然に大学時代の剣道部の一つ上の先輩と再会しました。その先輩は卒業後、医師になっていました。彼曰く、医師と患者の関係がギスギスして非常に困っていると。原因は、マスコミの流す偏った情報によって患者さんに変な先入観が蔓延していることで、一人一人の患者さんにそのことを丁寧に説明するとわかってもらえるが、現実は一日にたくさんの患者さんを診るので、余裕がまったくないというのです。患者さんは病院の待合室で非常に長い時間を過ごすので、そこにフリーペーパーという形で正しい知識を持ってもらえる情報を提供できれば、医師と患者がいまとは違うよい関係になれると思う、と。そして、それをつくってもらえないかというのです。

当時の私は医療にまったく興味を持っていなくて、新聞に書いてあることが本当のことだと思っていたので、医療現場がギスギスしていることも知りませんでしたし、先輩の言う患者さんと同じように医師にはとんでもない人も多いのだろうと思っていました。しかし、その先輩に連れられるかたちでいろいろな医師とお会いしてお話しさせていただくと、なんと非常にいい人達だったのです。そして本当に困っていらっしゃいました。先輩の言うとおり、医療者と患者さんとをつなぐようなメディアが必要だし、現状はポッカリと空白状態になっていると思うようになり「ロハス・メディカル」を立ち上げることにしたのです。

「ロハス・メディカル」創刊のきっかけになった、お医者さんと患者さんのギスギスした関係とはどういったものですか?

端的に言えば、患者さんが医療者を信用しなくなっていると思います。それにはいろいろな原因があるとは思うのですが、やっぱり一番大きなポイントは、患者さんが求めているものと医療者が提供しているものにギャップがあることでしょうか。
患者さんが求めているのは全人的な癒しだと思うのですが、それに対して医師が提供しているのは疾患に特化して治すという行為です。つまり患者さん側の期待と、お医者さんから提供されているものとに食い違いがあって、お互いがそのズレに気付いていないために、患者さんも医療者も不満を持っていると思います。

認識がズレる原因の一端として、逆説的ですが90年代から医療が飛躍的に進歩したことも挙げられると思います。遺伝子解析などは象徴的で、いままで治らなかった病気が治るようになったりしました。ただ、治るようになったのは全体から見ればほんの一部に過ぎず、未だ治せない病気の方がはるかに多いのに、メディアなどを使って成果をあまりにも強調したがために、治せない病気はないという誤解を世の中に生んだと思います。それが実態と乖離した過剰な期待となっているのではないでしょうか。私としては医療への期待を実態に合ったものにすることが重要だと考えていて「ロハス・メディカル」内でも少しずつですが意識して取り上げるようにしています。

患者さんとお医者さんの良好な関係とは、どのようなかたちになると思いますか?

川口 恭 さん

何より知っていただきたいのは、病気を治すのはご本人の治癒力だということです。医師が医療行為として行っていることの多くは、本人の治る力を引き出す手助けをしているだけなのです。このことを前提に関係を考えることだと思います。
その上で「ご自身の生活をどう過ごしたいのか」ということを考えることも重要です。病気ばかりに心が奪われているかもしれませんが、闘病するために人生があるのではないと思います。自分がやりたいことに優先順位をつけて、それを医師に話してみてください。自分はこういう生活をしたいのですけど、可能でしょうか。もし可能なら手伝ってください、と。こういう言い方をされて、手助けを拒む医師はいないと思います。現在の医師と患者の関係は、患者側が何を希望しているかはっきりしないので、ただただ医師主導で疾患の治療のみ行っているという例が多いのではないでしょうか。
病人を生きることは目的ではないはずです。一人の人間としてたまたま病気になってしまったけれど、自分の生活を生きる、それを助けるために医師がいる。そういう関係が望ましいのではと考えています。

ロハス・メディカル

ロハス・メディカル

  • 「治りたい」と「治したい」をもっともっと近づける、医と健康の院内フリーマガジン。 首都圏の基幹病院130カ所以上へ配置。毎月20日発行。 Webサイトでは、バックナンバーがごらんいただけます。
    http://www.lohasmedia.co.jp/

川口 恭(かわぐち きょう)

川口 恭 さん

ロハス・メディカル発行人

1970年、千葉県生まれ。
京都大学理学部を卒業後、朝日新聞記者として11年半を過ごす。
朝日新聞時代に、若者向け新聞「seven」、土曜版「be」と2つの新媒体立ち上げに携わる。その経験を生かし、2005年9月に「ロハス・メディカル」を創刊、現在に至る。

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