医療コーディネーター

嵯峨崎 泰子さん
有限責任中間法人 日本医療コーディネーター協会 理事長

医療コーディネーターとは?

「医師の話がわからないのです。何より患者本人が手術を拒否しているのです」と相談された私自身も、この当時子宮がん治療後でした。 「医療コーディネーター」を志すきっかけをつくってくださったこのがん患者さんのご家族とはもう13年のお付き合いになります。

医療コーディネーターは、医療サービスを提供する側(医療者)と医療サービスを受ける側(患者さん、ご家族を含めたすべての医療消費者)の間に立って、治療法、医療サービス、医療システム、医療倫理などさまざまな面で立場の違いからできる隙間を埋める調整役のことを指します。そして、クライアント(患者・家族・友人など)が「自分らしい生き方」を支えるための医療が受けられるよう、医療者・医療機関・関係各所との橋渡し役を担い、関わり方をサポートすることを仕事としています。これらは本来、看護師の役割であると思いますが、外来診療現場では看護師配置に規定がないため看護師の数が少なく、こういった役割を期待することには限界があります。

医療コーディネーターは、日本医療コーディネーター協会が認定している民間資格です。看護師・薬剤師、または医師資格所持者で30歳以上かつ臨床経験5年以上の方で、一定の講座を受けた方に資格が付与されます。

医療コーディネーターに期待されることは、①守秘義務が遵守されること、②これまでの経過を把握しクライアントの思いを理解し添えること、③電話やメールでいつでも気軽に相談でき、トリアージ(緊急度や重症度の判別)できること、④情報・人脈ネットワークを生かし治療情報にも精通し、主治医としっかり連携しながら機能してくれることなどです。「顧問看護師」・「治療時の伴走者」として、かなり長期に家族単位でお付き合いしていくことが少なくありません。ただ、保険が効くサービスではありませんので、相談料などは自費でご負担いただくことになります(1時間10,500円)

医療コーディネーター誕生まで

医療コーディネーターの活動を本格的に取材し、最初に取り上げてくださったのは、日経新聞の前村聡氏です。特集「医療再生」で取り上げていただいた2000年当時は、患者と家族のための「医療コンサルタント」と名乗っていたのですが、クライアントに同行して担当医に名刺を渡すと、「ぼくが開業するときにはよろしく! 」と開業コンサルタントと勘違いされることが多々あったので、2003年頃から「医療コーディネーター」に名称変更しました。しかしながらこのエピソード、当時は冗談話でしたが、患者をサポートすることが増えると、医師からの相談依頼も増え、医師をサポートすることでクライアントにもたらされるメリットは非常に大きいと実感しています。

医療コーディネーターの業務

医療コーディネーターの具体的な業務は、専門医を紹介することではありません。クライアントから受けた相談について、一緒に整理しながら納得できる生き方(治療やケアを可能にするためのアドバイスや、医療者とのコミュニケーションを円滑にするための対話方法などのレクチャー)をサポートしています。希望があれば、診察にも同席します。医師に面と向かっては伝えにくい思いを患者側の代弁者となり医師に伝えたり、患者側への説明補助や情報解説をし、医師との溝を埋めてゆきます。反対に、医師や医療機関の立場・状況を伝え理解を促し、生じていた誤解やもやもや感を解消することも私たちの重要な役目です。クライアントが患者本人以外であれば、患者の置かれている状況をどのように理解し、患者や医療者とのスタンスをどう保ち、関わるか、患者を支えるポイントなどについてアドバイスをしています。

最近は情報をきちんと整理されているクライアントが増えました。面談は最初の1、2時間で終わり、あとはこちらのアドバイスを受けて自己解決できるというケースが多くなりました。その後は、選択分岐点ごとに相談に来られる方が多いです。

今後の展望

現在、医療専門職だけではなく、一般の方のヘルス・コミュニケーション、ヘルス・リテラシーの向上を目指し、より円滑な医療社会が構築できるよう、大学との共同研究や企業の事業などに協力しています。また、協会認定医療コーディネーターが教育担当として活躍する「専門カウンセラー」や、「ピアカウンセラー養成事業」(東京都)、「乳がん体験者生涯学習講座」(4団体合同)、「認定ヘルスケアコーディネーター養成講座」(㈱早稲田総合医療研究所主催)をはじめとするさまざまな教育事業の運営にも協力しています。

今後は、外来業務の中で医療コーディネーターたる看護師が機能できるような制度を考えていけたらと思うこの頃です。「医師の診療補助」という業務の中で、秘書的機能も含め最大限サポートすることができれば、医師にゆとりができ、患者の語りを重視した診療にもつながり、経営上も決してマイナスには働かないと、この7年関医療機関経営に関与して実感しています。
また当協会の教育方針として、ほかのコメディカルのそれぞれの専門的立場が最大限生かされるよう、医療コーディネーターは潤滑油のような役割を担えるような教育を目指しています。

こういった講座の中では、体験者の語りや発表が非常に重要視されています。体験者の存在そのものや、多くの語りは、悩む方々に勇気を与え、孤独からの救いに成り得ます。体験者自身が、つらい思いを語ることや、ほかの方へのサポーターとなることにはさまざまな壁もありますが、時間の流れと共に人それぞれの在り方が生まれ、望めば必ず壁は乗り越えられます。
人は、誰かに求められるからこそ「生きるエネルギー」を生み出せるのではないでしょうか。

パレットメモ

連絡先

日本医療コーディネーター協会
〒135-0048東京都江東区門前仲町2-11-8
FAX 03-5621-8611  info@jpmca.net
ホームページ http://www.jpmca.net/index.html
嵯峨崎 泰子 さん

嵯峨崎 泰子(さがざき・やすこ)

有限責任中間法人 日本医療コーディネーター協会 理事長

1965年、島根県松江市生まれ。
1989年、浦安市川市民病院附属看護専門学校卒業。看護師免許取得。
1995年、日本女子大学家政学部卒業。
臨床各科勤務を経て、医療器メーカー及び商社にてセールス・マーケティング・社員教育を担当。臨床コーディネーターとして主に米国製品の治療技術と治療材料の導入に携わる。この間、カリフォルニア州立大医療センター、ニューヨーク大医療センター、ユタ州立大小児医療センターで放射線科・脳神経外科領域クリニカル・コーディネーターのトレーニングを受ける。
1996年~2006年、医療コンサルティング、コーディネートを主業務とした(有)アカデミー・アンド・アセスメント・エイド設立。
個人(患者)の治療アレンジメントを主としたコーディネート、医薬品、医療材料のマーケティング、臨床試験のコーディネートを行う。
2003年に日本医療コーディネーター協会設立会長就任(2006年に有限責任中間法人化し、理事長就任)、2006年4月、医療法人社団ユメイン副理事長就任。
2007年4月、株式会社早稲田総合医療研究所代表取締役就任。
2007年11月、宗教法人高野山真言宗尊照山千手院役員就任。

  • 主な著書:
  • 「生命と医療にかける橋」(生活ジャーナル、2000年)
  • 「乳がん110番」(南雲吉則編共著、日刊工業新聞、2004年)
  • 「あなたのがん治療、本当に大丈夫」(南雲吉則他編共著、三省堂、2005年)
  • 「抗がんサプリメント徹底検証」(南雲吉則他編共著、三省堂、2005年)
  • 「がんの時代を生き抜く10の戦術!」(絵門ゆう子他共著、三省堂、2006年)
  • 「先生、ほかの医者紹介して下さい」(嵯峨崎泰子編、南雲吉則監修、文芸社、2006年)
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