セカンドオピニオン~納得して医療を選ぼう~

南雲 吉則先生
ナグモクリニック院長/NPOキャンサーネットジャパン顧問

「情報量の格差」から「情報の質の格差へ」

医師と患者の対等な関係が唱えられて久しいが、いまだそこには深い溝がある。その理由の一つが「情報の格差」である。かつてそれは「情報の量の格差」であった。医師は患者よりも圧倒的に多くの量の医学情報を有し、また患者の個人情報も握って開示しなかった。そのような格差の下では、立場の違いが生じるのは当然のことであった。

ところが現在は「情報の質の格差」である。毎日のように新聞、雑誌そしてインターネットから押し寄せる情報の波に押し流されて、自分の行く先を失っているのである。このような玉石混淆の情報を選別する方法の一つが「セカンドオピニオン」である。

セカンドオピニオンは直訳すれば、主治医の意見に対する「第2の医師の意見」である。医師の意見にはその医師が自らの経験を通して培ってきた知識や反省が込められている。
ある治療法を通して一人の大切な患者を死なせてしまったとする。個々の患者の死は疾患群全体から見れば統計的価値のないものであろう。しかしその医師の医療には大きな影響を与えているのである。
すなわち医師の意見には人生観が注入されており、全くの客観的な判断など不可能なのである。一方で患者の願いも主観的なものである。自らの命を科学という土俵の上で他人事のように評価するということはできない。

「納得して医療を選ぶ」サポートをするのがセカンドオピニオン

そこで自らの価値観や人生観に合った治療法・主治医捜しの旅が始まるのである。外科ばかりでなく、内科、放射線科を回ってみると、その診療科ごとにさまざまな治療法や考え方があることに気付く。時には価値観を変えてくれる医師に出会うかもしれない。結局、主治医の元に戻ることもある。
しかし多くの人の目を通して自らの病気を見つめ直して、「納得して医療を選ぶこと」が後悔しないための方策なのである。

かつて私が代表を務めていた「NPOキャンサーネットジャパン」 ) は、1991年に「セカンドオピニオンシリーズ」と呼ばれる小冊子全10冊を出版した。 これは米国国立衛生研究所NIHの出版する乳がん患者向け小冊子の翻訳である。
その後「キャンサーファクス」「キャンサーネット」「セカンドオピニオンコール」「セカンドオピニオンメール」さらに「セカンドオピニオン外来」とボランティアを継続した。
複数のボランティア団体または個人による「セカンドオピニオンネットワーク]) も設立し、セカンドオピニオンの概念やセカンドオピニオン協力医の紹介も行ってきた。
また2000年からはEBM(Evidence Based Medicine)すなわち「科学的根拠に基づいた医療」の普及のため「EBMシンポジウム」の開催や、日刊流通サービス新聞(現、日刊工業新聞)紙上で健康欄を担当した。

これらの活動は医師の主観を極力排除して、「公平・公正かつ最新」の情報を客観的に提供しようとするものであった。そして自らセカンドオピニオン外来を担当しているときには、自分こそがさまざまな医療情報の審判員であると自負していた。
しかし、時代も移り変わり医師の誰もが「エビデンスが」「科学的根拠によれば」と伝家の宝刀のごとくEBMを振りかざすようになった。また自分より若い医師たちが、インターネットを駆使して情報を収集し、外国語論文を読破し、海外の学会に参加しているのを見ると、これはもうかなわないと感じ、キャンサーネットジャパンの代表を昨年退いた。

いまは自分こそが公平・公正であるなどと思い上がらず、自分の人生を通して最善と思える意見を述べ、それも第2の意見、患者の選択肢の一つになろうと思っている。

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