第5回■「糖尿病」の治療■

医学博士 岩岡 秀明
船橋市立医療センター 代謝内科部長

糖尿病の治療(食事療法、運動療法、薬による治療)

  • 糖尿病の治療は、合併症の発症・進行を予防するために、血糖をコントロールすることが基本となります。

  • 血糖コントロールの手段として、「食事療法」「運動療法」「薬による治療」の3つが柱となります。

食事療法

  • すべての糖尿病の患者さんにとって、食事療法が基本となります。食事療法は、決して制限の厳しい「病人食」ではありません。

  • 糖尿病の食事療法のポイントは、以下の2つです。

    • ①決められた範囲内のエネルギー(摂取エネルギー)にすること。
    • ②たんぱく質、糖質、脂質などの栄養バランスがとれた食事にすること。
  • したがってこの食事は、すべての健康人にも勧められる「健康食」だといえます。

  • 2型糖尿病の場合は、厳格に食事療法を守れば、7割以上の患者さんがそれだけでコントロールが可能だといわれています。

  • エネルギー摂取量は、標準体重×身体活動量(kcal/kg体重)で求めます。軽労作(デスクワークが主な人)の場合、身体活動量は、<25~ 30kcal/kg標準体重>となります。

  • 具体的には、病院で栄養士から指導を受けたり、講習会に参加するなどして、栄養バランスのとれた食事の仕方を習得するようにします。最近では、糖尿病食のレトルト食品、あらかじめカロリー計算された食事・食材の宅配など、食事療法を手軽に実行するためのサービスが向上してきています。

運動療法

  • 運動で、体内のエネルギーを消費することにより、血糖値は下がります。また、、インスリンの細胞レベルでの働きが高まり(インスリン感受性が高くなり)、血糖コントロールがしやすくなります。

  • さらに、血行がよくなる、心肺機能がよくなる、骨格筋が増える、ストレスが解消される、日常生活の質が高まるなど、多くの効果を得られます。
  • 「いつでも、どこでも、1人でも」できる運動がよく、その点から歩くことが最も適切です。

  • 運動時の脈拍数は100~120/分以内にとどめ、歩くときは、1回15~ 30分間、1日2回を目標とし、日常生活の中に組み入れ、できれば毎日、少なくとも1週間に3日以上行うことが望ましいでしょう。

薬による治療

  • 食事療法運動療法だけではコントロールがうまくできないとき、薬による治療が必要となります。

  • 「血糖を下げる飲み薬による治療」と「インスリンを注射で補充する治療」の2種類の薬による治療が行われています。

  • 血糖を下げる飲み薬には、膵臓からのインスリン分泌を増加させる薬(DPP-4阻害薬スルホニル尿素薬即効型インスリン分泌促進薬)、肝臓で糖がつくられるのを抑制して血糖値を下げる薬(ビグアナイド薬)、腸からの糖の吸収を遅らせる薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)、インスリン抵抗性を改善して血糖値を下げる薬(チアゾリジン薬)があります。

  • インスリンによる治療は、ペン型注射器を使用して、1日1回の注射と飲み薬を組み合わせる方法や、1日3回(各食前)または1日4回(各食前と睡眠前)注射する「強化インスリン療法」があります。

  • どちらの治療をいつからはじめるかは、患者さんの糖尿病の病型や病状、合併症の進行具合など、さまざまな要因を総合して決められますので、主治医の先生とよく相談しましょう。

  • <引用・参考文献>
  • 1)日本糖尿病学会編:糖尿病治療ガイド2012-20013、文光堂;2012
  • 2)鈴木吉彦:はじめて知る糖尿病、主婦の友社;2002.
  • 3)岩岡秀明他編著:糖尿病;よくみる病気がわかる本、照林社;2006 p2-7

本稿の内容は、「よくみる病気がわかる本」(岩岡秀明他編著、照林社 2006年)の「糖尿病」から転載し、一部加筆修正しました。

第1回■糖尿病のしくみ■へ
糖尿病の基礎知識について
第2回■「糖尿病」の分類■へ
1型糖尿病、2型糖尿病の特徴について
第3回■糖尿病の診断とコントロールや数値の指標■へ
糖尿病の診断・指標について
第4回■「糖尿病」の合併症■へ
糖尿病の急性合併症、慢性合併症について

岩岡 秀明 先生

岩岡 秀明(いわおか・ひであき)

船橋市立医療センター 代謝内科部長
医学博士

1981年 千葉大学医学部卒業
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会内分泌代謝専門医
千葉大学医学部臨床教授

【編著書(共同)】
「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック(2012年 中外医学社)」
「オールカラー 生活習慣病に視点をおいたよくみる病気がわかる本」

【執筆記事】
日経メディカル2013年4月号「著者に聞く」(転載)
「糖尿病治療薬の選択のコツを詳述、非専門医向けの実践マニュアル」

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