第3回■糖尿病の診断とコントロールや数値の指標■

医学博士 岩岡 秀明
船橋市立医療センター 代謝内科部長

糖尿病の診断

  • 血糖値は食前か食後か、ストレスのある状況か否か、などによって絶えず変化しています。血糖値が「糖尿病型」(空腹時血糖値126mg/dl以上または随時血糖値200mg/dl以上)で、かつ以下の3つのどれかを満たす場合には1回の検査で糖尿病と診断できます。

  • ①糖尿病の特徴的な症状(のどの渇き、多飲・多尿、体重減少など)が明らかな場合。
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上の場合。
  • ③糖尿病性網膜症が確実な場合。

  • 血糖値のみ糖尿病型の場合やHbA1cのみ糖尿病型(6.5%以上)の場合は、日を改めて再検査が必要です。

糖尿病のコントロールとその指標

  • 糖尿病は、残念ながら現在のところ完全に治すことはできません。しかし、血糖値をできるだけ正常な値に近づける(コントロールする)ことによって、合併症の発症・進行を予防することは可能です。

  • つまり、しっかり治療をしていれば、一生治ったのと同じ状態を保つことができると表現できます。そのため、生涯にわたって治療を続ける必要があります。

  • また、動脈硬化症(脳梗塞や心筋梗塞)の発症・進展を予防するためには、血糖だけでなく、体重、血圧、血清脂質のコントロールも重要となります。以下、日本糖尿病学会による指標と基準を示します。

    1. ヘモグロビンA1c(HbA1c)と血糖
      赤血球の中にあるヘモグロビン(血色素)のうち、ブドウ糖と結合している特殊なヘモグロビン(グリコヘモグロビン)の割合を%で表した指標です。健康な人は4.6~ 6.1%です。この指標は過去1~2か月間の平均血糖値とよく相関し、HbA1cが高ければ、その時点の血糖値は正常だとしても、1~2か月間は血糖が高い状態が続いていたことになります。
      合併症を起こさないためには、HbA1cを6.9%未満に保つことが目標となります。
      HbA1c 1%の変化は、平均血糖値で約35mg/dLに相当します。
      また、空腹時血糖は80~110mg/dL、食後2時間は80~140mg/dLが良好なコントロールの目標となります。

    2. 体重
      BMI(body mass index)=(体重kg)/(身長m)2=22が、長命かつ病気になりにくい「標準体重」となります。
      BMI 20~24が目標となり、BMI=25以上を肥満とします。

    3. 血圧
      収縮期血圧は130mmHg未満、拡張期血圧は80mmHg未満が目標となります。

    4. 血清脂質
      総コレステロールは200mg/dL未満(いわゆる「悪玉」のLDLコレステロール120mg/dL未満)、中性脂肪は150mg/dL未満(早朝空腹時)、いわゆる「善玉」のHDLコレステロールは40mg/dL以上が目標です。

血糖自己測定(SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose)の重要性

  • 2型糖尿病は何年もかけて徐々に発病していきますので、軽度から中等度の高血糖では自覚症状がありません。

  • また危険な低血糖も、高齢者の方、進行した神経障害がある方、頻回に低血糖を起こしている方では、「無自覚性低血糖」と言って、通常の自覚症状(気分不快、ふるえ、冷汗、動悸など)が無く、いきなり意識もうろう状態や昏睡になる場合もあります。

  • したがって、良好な血糖コントロールを保つためには、1~2ヶ月に1回の医療機関での血糖検査とHbA1c検査だけでは不十分です。いつでも、どこでも簡単に(約5秒で)血糖値が測定出来る血糖自己測定が重要となります。

  • 1型糖尿病の方は全員必ず行う必要があります。2型糖尿病でもインスリン注射をしている方は健康保険の適用となりますので経済的にも大きな負担はなく行うことができます。ぜひ、血糖自己測定を始めましょう。

  • また、飲み薬で治療中の方が血糖自己測定を行う場合は全額自己負担となりますが、血糖自己測定の機器は薬局で購入できますので、興味のある方はぜひ主治医の先生に相談してみましょう。

本稿の内容は、「よくみる病気がわかる本」(岩岡秀明他編著、照林社 2006年)の「糖尿病」から転載し、一部加筆修正しました。

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岩岡 秀明 先生

岩岡 秀明(いわおか・ひであき)

船橋市立医療センター 代謝内科部長
医学博士

1981年 千葉大学医学部卒業
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会内分泌代謝専門医
千葉大学医学部臨床教授

【編著書(共同)】
「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック(2012年 中外医学社)」
「オールカラー 生活習慣病に視点をおいたよくみる病気がわかる本」

【執筆記事】
日経メディカル2013年4月号「著者に聞く」(転載)
「糖尿病治療薬の選択のコツを詳述、非専門医向けの実践マニュアル」

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