第1回■糖尿病のしくみ■

医学博士 岩岡 秀明
船橋市立医療センター 代謝内科部長

糖尿病の基礎知識:糖代謝のしくみ

食べものに含まれる糖分は、胃腸でブドウ糖に分解され、一部はグリコーゲンという物質に変換されて肝臓に貯えられるほか、血液と一緒に全身に運ばれ、筋肉などの細胞に取り込まれて、エネルギー源となります。

あまったブドウ糖は、皮下脂肪などの脂肪組織にも送られて、脂肪につくり換えられます。また蛋白質や脂質も、それぞれ独自の仕方で消化・分解され、分解された物質は肝臓に送られて、必要に応じてブドウ糖につくり換えられて利用されます。

健康な状態では、「血糖値」(血液中のブドウ糖の濃度)は常に一定に調節されています。空腹時の正常血糖値は、70~109mg/dLです。この調節を担っているのが数種類のホルモンです。

血糖が低くなった場合、グルカゴンやアドレナリン、コルチゾールなどという血糖値を上昇させるホルモンが増加して、肝臓に貯えられたグリコーゲンが再びブドウ糖に変わるように作用して、血液の中にブドウ糖を供給するように働きます。

「糖尿病」はなぜ起こる

一方、血糖値が正常より高くなると、インスリンというホルモンが血糖を下げる働きをします。インスリンは、胃の後ろ側にある膵臓から分泌されます。

膵臓には「ランゲルハンス島」という特別な細胞の集まりがあって、その中の「β細胞」がインスリンをつくったり、貯蔵したりしています。

インスリンは、細胞が血液の中からブドウ糖を取り込んでエネルギーとして利用するのを助ける働きをしています。また脂肪組織の中でも、ブドウ糖を脂肪につくり変えたり、貯えられている脂肪が分解するのを抑えたりします。

インスリンの作用が不足すると、ブドウ糖を利用できなくなり、体内にだぶついて、「血液中のブドウ糖濃度」=「血糖値」が高くなります。これを「高血糖」といい、この状態が慢性的に継続するのが、糖尿病という病気です。

なお、尿の中に糖が排泄されているかをあらわす「尿糖」は、血糖値が通常170mg/dl前後以上になると陽性となりますが、正常血糖値では(陰性)です。したがって、軽症の糖尿病では尿糖は陰性ですので、尿糖が陰性だからといって糖尿病ではないと診断することは出来ません。

本稿の内容は、「よくみる病気がわかる本」(岩岡秀明他編著、照林社 2006年)の「糖尿病」から転載し、一部加筆修正しました。

第2回■「糖尿病」の分類■へ
1型糖尿病、2型糖尿病の特徴について
第3回■糖尿病の診断とコントロールや数値の指標■へ
糖尿病の診断・指標について
第4回■「糖尿病」の合併症■へ
糖尿病の急性合併症、慢性合併症について
第5回■「糖尿病」の治療■へ
食事療法、運動療法、薬による治療について

岩岡 秀明 先生

岩岡 秀明(いわおか・ひであき)

船橋市立医療センター 代謝内科部長
医学博士

1981年 千葉大学医学部卒業
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本糖尿病学会専門医・指導医
日本内分泌学会内分泌代謝専門医
千葉大学医学部臨床教授

【編著書(共同)】
「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック(2012年 中外医学社)」
「オールカラー 生活習慣病に視点をおいたよくみる病気がわかる本」

【執筆記事】
日経メディカル2013年4月号「著者に聞く」(転載)
「糖尿病治療薬の選択のコツを詳述、非専門医向けの実践マニュアル」

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