抗がん剤の治療費

がん治療費.comについて

「がん治療費.com」は、がんと診断された方やそのご家族の方、さらに将来がんにかかった時の準備を考えている方等を対象に、がんの治療費の概要をお知らせすることを目的につくられたサイトです。
ライフパレットでは、胃がん、肺がん、乳がんの治療費について、「がん治療費.com」より、転載しています。
ここでは、その計算方法につきご説明しています。

抗がん剤の治療費

新しい抗がん剤を開発するコストは高騰を続けています。
世界的な規模で開発が進められていること、巨大製薬会社間の競争も激しいことがその原因です。最近では1つの新しい抗がん剤を発売するまでに、8億ドル(800億円強。2008年5月末現在)かかるという情報も伝えられています。開発費用の増加と連動して、抗がん剤を使用した治療費も高くなっています。
加えて、抗がん剤の使い方についても、ある抗がん剤を1つだけ単独で使うことはまれで、複数の抗がん剤をいっしょに使うことが多くなったためにさらに治療費が高くなるわけです。

がん治療費.comでは、あるがんの、ある進行度(ステージ)で使用される代表的な抗がん剤治療の選択肢(抗がん剤をどのように組み合わせ、いつ使用するかという計画のことで「レジメン」と呼ばれます)をいくつか示し、そのレジメンを選んだ場合にかかる総薬剤費を紹介しています。

例えば、転移し手術ができない状態になっている大腸がんや一部の再発した大腸がんの治療選択肢として、FOLFOX4という抗がん剤のレジメンがあります。これは入院して初日に3種類、2日目に2種類の薬について注射のタイミングや方法を変えて使い、その後退院して薬の使用を一時休止するものです。この2日間の薬の使用期間とその後の休止期間を合わせて2 週間を1コース(1クールともいいます)とし、薬の効果が続く限り、このコースを繰り返し行うものです。

ここでは、FOLFOX4というレジメンを選んだ場合の1コースの治療費(薬剤費)がどの程度かかるという形で紹介しています。1コースの治療費には、薬(抗がん剤)の費用のみ含みます。その他、医師が薬を決定する際の処方料、薬剤師が薬を選び、調合する調剤料、その他定期的な画像診断や血液検査等の費用は一切含みません。

実際にある抗がん剤の治療費を計算する際に、最も大きな影響を与えるのは、患者さんの体の大きさ(身長と体重)です。抗がん剤の標準的な使用量は、体重、もしくは体表面積に比例します。そのうち、「体表面積」というのは耳なれない言葉ですが、次の計算式で決定されます。

体表面積=体重0.425×身長0.725×0.007148

ここでは、平成12年国民栄養調査に基づく男女70-74歳の平均身長と平均体重をもとに次の表のような体重や体表面積から抗がん剤の使用量を設定し、薬剤治療費を計算しています。

患者さんの想定身長、体重、および体表面積          
男性 女性 平均
身長 161 148 154.5
体重 60 51.5 55.75
体表面積 1.629 1.437 1.533

注)乳がん・子宮がん等は「女性」、前立腺がんは「男性」それ以外は「平均」の値を採用

最後に、抗がん剤の名称についてです。これは抗がん剤に限らず、医師の処方を必要とする医薬品についていえることですが、医薬品の名称には大きく2種類あります。
ひとつは、薬の化学的な組成や構造などから命名されたもので「一般的名称」といいます。他は、「販売名」「商品名」などと呼ばれる製薬会社ごとの商品ブランド名です。同じ成分の抗がん剤を複数の製薬会社が製造・販売している場合には、一つの一般的名称について複数の販売名が存在することになります。

抗がん剤の後発品

日本でも総医療費を抑制するという世界の流れに合わせて後発医薬品(ジェネリック)と呼ばれる医薬品の使用を推奨しています。後発医薬品とは、新薬について、その特許が切れた後で登場する、効果のある成分を新薬と同じくする薬のことです。すべての成分が新薬と同じというわけではありません。

一般に、広く保管・流通が可能で、患者さんの服用に適した形状や性質の薬を得るには、効果のある成分だけでは無理です。

例として薄力粉や強力粉でまんじゅうの皮を作り、中に「あん」を入れることを想像します。「あん」は同じものを使っても、薄力粉や強力粉の量、配合を変え、あるいは塩や砂糖を隠し味に使うこともあります。この「あん」に相当するのが効果のある成分であり、後発医薬品会社は皮の部分に独自性を凝らしながら、新薬とは異なる「皮」を使って薬に仕上げ、それぞれの会社の商品名をつけて販売しています。

その品質について、新薬を開発する製薬会社の方が規模も大きく有名ですので信頼を得ているようですが、必ずしも後発医薬品が新薬より劣っているわけではありません。薬の吸収のしやすさや飲みやすさについては、新薬の特徴をじっくり研究しつくし、新しい剤形技術を使った後発医薬品の方が優れていることもあります。少なくとも、後発医薬品が新薬より効果・効能において劣っているという科学的根拠はなく、そうした根拠があればそもそも後発医薬品として政府の承認が得られないはずです。はっきりしているのは、莫大な新薬開発コストのかかっていない分だけ後発医薬品の方が新薬よりも価格が安いということです。

ともあれ、抗がん剤の分野でも後発医薬品は存在します。最近登場した分子標的薬のようなバイオテクノロジーを使った抗体医薬の後発医薬品の登場についてはまだまだ時間がかかると思われますし、一般の後発医薬品同様の価格ダウンは期待できないようですが、バイオテクノロジーを使った一般医薬品についても後発医薬品*が承認され始めています。ヒト成長ホルモンや血液成分の後発医薬品は既に欧州で承認されています。バイオテクノロジーを使った抗がん剤の価格は高いので、早期の後発医薬品登場が待たれるところです。

※バイオテクノロジーを使った後発医薬品は、一般の後発医薬品と区別して欧州では「バイオシミラー:Biosimilars」、米国では「フォローオンバイオロジクス:Follow-on biologics」と呼ばれています。

さて、ここでは、抗がん剤の後発医薬品を取り上げ、新薬から後発医薬品にスイッチした場合の具体的な治療費削減効果についてご紹介します。抗がん剤の後発医薬品が使用可能ながんのうち、非小細胞肺がん、子宮頸がん、すい臓がんの具体的なレジメンを見ます。費用については、すべて先発医薬品と最も価格の低い後発医薬品のそれを比較しています(平成22年9月30日現在)。

非小細胞肺がん

まず、非小細胞肺がんについては、カルボプラチンとパクリタキセルを併用するレジメンがあります。2つの抗がん剤についてそれぞれ後発医薬品を使用した場合、薬剤費が1コースあたり8万円1千円下がりますので、自己負担額は2万4千円低下します。

レジメン カルボプラチン+パクリタキセル
期間/コース 4週間
治療費(円)/コース (A)先発品 205,830
(B)後発品 124,820
(A) - (B) 81,010
(B)/(A) 61%

子宮頸がん

2つ目は、子宮頸がんにシスプラチンとイリノテカンを併用するレジメンです。薬剤費は1コースあたり4万2千円、自己負担額は1万3千円弱低下します。

レジメン シスプラチン+イリノテカン
期間/コース 4週間
治療費(円)/コース (A)先発品 89,370
(B)後発品 47,070
(A) - (B) 42,300
(B)/(A) 53%

すい臓がん

最後は、すい臓がんに使用されるゲムシタビンのレジメンです。薬剤費は1コースあたり4万1千円、自己負担額は1万2千円低下します。本レジメンは胆嚢・胆管がんにも使用されますので、後発医薬品の使用による同様の経済効果を期待できます。

レジメン ゲムシタビン
期間/コース 4週間
治療費(円)/コース (A)先発品 124,170
(B)後発品 82,710
(A) - (B) 41,460
(B)/(A) 67%

以上のとおり、抗がん剤治療にあたり、先発医薬品から後発医薬品に変えることの自己負担額削減効果は大きく、しかも上記治療を何コースも繰り返し行う場合にはさらに経済効果は大きくなります。風邪や生活習慣病で受診する時と同様、抗がん剤治療の際にも後発医薬品があるかどうか確認し、その使用を希望する場合には主治医にきちんと伝えましょう。

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