第9回 診療ガイドライン
治療法を決めるとき、医師はどのように患者に最善の治療法を選ぶのでしょうか?<>br/ 欧米では、特定の治療法や薬が本当に効果があるか否かを調べるために大規模な臨床試験が行われます。その結果が集められ、それぞれの病気を診療する上での「ガイドライン(指針)」がつくられています。
この診療ガイドラインをもとに確立されている標準治療を医師は個々の患者のケースに適応し、標準治療の適応が困難な場合には、その人に応じた治療法を選択していきます。
日本でもガイドラインがなかったわけではありませんが、それらは科学的根拠(エビデンス)よりも著名な医師の経験に基づいてつくられる傾向がありました。しかし、1999年から23の疾患についてエビデンスに基づくガイドラインが作成され、一般向けにもわかりやすく解説されたものができています。
それらは「Minds医療情報サービス」のホームページで公開されており、誰でも無料で利用することができますので、治療法を選択する際には、参考にするとよいでしょう。
後日談
このコラムを書いた8ヵ月後、突然、父が脳出血で倒れました。
主治医に「血腫除去術」という脳に残っている血液を取り除く手術をすすめられました。
手術をしたほうが後に残る後遺症が少なくなる可能性が高いというのがすすめる理由でした。が、術中に亡くなる可能性は1%とのこと。
迷った私は、日本脳卒中学会の診療ガイドラインを手に取りました。
すると、ガイドラインには、「急性期の治療として本症(視床出血)に血腫除去術をすすめるだけの根拠はない」と書かれていました。
ガイドラインには,グレード(推奨度)がありますが、父がこの手術を受けるグレードは、C2と書かれていました。グレードC2とは、「科学的根拠がないので,すすめられない」というものです。
なぜガイドラインですすめられないものを主治医はすすめるのだろうと疑問に思い、再度、主治医(脳卒中専門医)に説明を求めました。すると、彼は「経験的によくなった人が多いから」と答えました。ガイドラインを信じるべきか、主治医の経験を信じるべきか。
考えた挙句、よくなる可能性にかけ、私たちは父の手術をお願いし、無事手術を終えました。医師と患者で診療ガイドラインを共有する難しさを改めて感じました。
※中日新聞に掲載したものを転載致しました。
















