第7回 萎縮医療

「休み時間の鬼ごっこ禁止」という新聞の見出しを見て、何の冗談だろうと思い読んでみると、そこには「訴訟社会・米国」の深刻な教育事情が描かれていました。
マサチューセッツ州のとある公立小学校が、教師の注意が行き届かない休み時間の校庭での鬼ごっこ・追いかけっこを禁じたのです。 休み時間は事故が起きやすいため、学校の監督責任を問う訴訟が増大していることへの対応だといえましょう。

2006年8月に奈良県内の町立病院で、脳内出血を起こした妊婦が19もの病院に搬送を断られ死亡するという事件が起こりました。
主治医の診断ミスもさることながら、これだけの病院が治療を必要とする患者を拒んだことに社会は衝撃を受けました。受け入れ拒否の理由のひとつに、「リスクの高い妊婦を受け入れ、後で母子に後遺症が残ると訴訟に巻き込まれるのでは?ならば無理をしてまでかかわらないほうがよい……」という「萎縮医療」が挙げられることは否めないでしょう。
事実、産婦人科医の数は日本の医師全体の4%にも満たないのに、この科への訴訟件数は約13%を占めており、訴訟リスクが極めて高いのです。
一方、亡くなった妊婦さんは健診を受けていなかったいわゆる「飛び込み妊婦」であったこともわかり、問題を複雑化しました。

子どもたちが校庭で自由に遊べない学校、医師が患者の命を救うためにリスクを背負えない医療現場……。
そのいずれもが、リスクへの責任を誰が負うのかという大きな問題をはらんでいるように思えます。

※中日新聞に掲載したものを転載いたしました。


1
Member_bn_1
N_sp_bn_1
お気に入りに追加

ご意見ご感想をお聞かせください ライフパレットは、みんなでつくっていく、患者コミュニティサイトです。ご意見ご感想をフォームにご入力の上送信ボタンを押してください。

アンケートモニター募集!
闘病記サイト編集者の日記 朝日新聞 アスパラクラブ連載中