【患者会紹介エッセイ】さ・く・ら のはじまり

日立総合病院おしゃべり会『さ・く・ら』を2006年7月に立ち上げた佐藤ゆかりさんによる、会への想いが綴られたエッセイです。

Y子さんとの出会い

2002年10月10日、私は日立総合病院に転院してきました。
病名は急性リンパ性白血病でした。
その時の私は、あと1、2週間遅れたら抗がん剤治療もできないほど最悪の状態で、自力歩行も困難で車イスでの移動でした。 トイレに行くのにも辛くて苦しいさなか、同じようにとっても辛そうにしていた人がいました。私と彼女は、障害者トイレを使用しており、時折かち合うことがありました。 便座に座ることすら辛くて苦痛な表情をしており、同じような思いをしていることを知り、励みにしていました。

一ヵ月後、点滴台を杖代わりにして病棟を散歩していた彼女を見かけました。
後姿が前よりしっかりしていたので、自分のことのように嬉しくなり思わず声をかけました。「前より良くなりましたね」と。彼女は後ろを振り返り、今まで見たことない笑顔で私をみました。この時、彼女は私の存在を知ったみたいでした。 ちょうど私の病室の前だったので、彼女を誘い、初めて会話しました。 お茶やお菓子を食べながら、色々入院生活の話をしました。
彼女との会話は、入院して初めて楽しい気持ちになれた気がします。

次の日、彼女は自分の家族をつれてお見舞いに来てくれました。 娘さん、お姑さん、お孫さんまで紹介してくれました。
娘さんが「お母さんにも病院で友だちができたのね」と嬉しそうに言いました。 そう、入院生活の中で、気の合う友だちが、Y子さんだったのです。 娘さんに頼んで買ってきてもらったらしく、サンドヴィッチとおせんべいをいただきました。「どうして?」と聞くと、「だってゆかりちゃん、トマトのサンドヴィッチとおせんべい食べたいって言っていたでしょ~」と笑顔で。昨日色々話したけど、自分で言ったことなど記憶になく、何気ない会話の中でのことから私を気遣ってくれて、驚きとともにY子さんの優しさに感激しました。喪失感でいっぱいの入院生活の中で心にしみる出来事でした。

コーヒータイム

それからY子さんとは昔からの友人のように仲良く過ごしていました。
おいしいコーヒーが飲みたいのとリクエストに応えて、病室でドリップしてコーヒータイムを楽しんでいました。ベッドに一人でいると暗くて心も沈んでしまうけど、私と会話していると、心が和むと喜んでいました。私も同じ気持ちでした。コーヒーの香りに会話もはずみ、病室の患者さんとも仲良くなっていました。みんなでコーヒーを飲みながらおしゃべりしながら励まし合い、お互いを思いやり合い、楽しい話題に笑ったりして、コーヒータイムを楽しんでいました。
入院中の不安や苦しみをおしゃべりすることで心が癒されていました。 死と向かい合いながら病室で過ごす夜の時間は長く、治療の辛さは、まるで闇の中にいるかのようでした。そんな日々のなかで楽しい日課が増えたのでした。

突然の別れ

また治療で個室生活が始まり、それからもY子さんは私と一緒におしゃべりしたいと言って病室を訪れていました。そしていつも私に気を配ってくれていました。 Y子さんとの楽しい時間は、ずっと続くものだと思っていました。
買い物いけない私のために行ったことない売店にいって、飲み物など買ってくれて冷蔵庫の中にしまってくれたあの時の会話が最後になるとは、夢にも思いませんでした。
突然の別れはあまりにもショックで、言葉では言い表せないほどでした。 Y子さんとの別れの時初めて、死ぬのが怖いと心から思いました。 その後私の心は閉ざされ、別の意味で入院生活が辛くなりました。

C子さんとのモーニングコーヒー

半年が過ぎ、新しくガン病棟もでき、病棟も変わりました。同室の患者さんが、起床時にコーヒーを入れていました。「コーヒー飲みませんか?」と声をかけられました。コーヒーから会話に花が咲き、またおしゃべりが始まりました。その日から毎朝、コーヒーを片手に会話が弾み、楽しい朝を迎えることができました。私はまた心を開き、前向きに治療をする気持ちになりました。C子さんは手術したばかりのご主人の退院を待っての入院でした。それでもいつも明るく朗らかで、笑いの絶えない素敵な方でした。その後、私は移植が始まり、C子さんも治療のため個室に入り、会うことはできませんでした。

手紙の交換

2003年7月骨髄移植をしました。その後、私たちは手紙でお互いを励まし合いました。郵便配達人は看護師さんでした。点滴交換などで病室に来た時にお願いし、快く引き受けてくれました。データもよくなく希望もなくしそうな時に、手紙が届くとすごく嬉しくなり勇気と希望が湧きました。コーヒーが大好きだったC子さんは手紙にいつも「よくなったら一緒に飲もうね」と書いてありました。しかし、その約束は叶いませんでした。そしてC子さんとも別れがきました。いつも前向きで明るいC子さんの分までがんばって生きよう、そう思うようになりました。

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