口腔ケアの大切さをもっと広く伝えたい―――

医療法人社団 秀真会 理事長
玉置 秀司先生

定期的な検診で、口腔がんも予防

近年、医療・介護福祉の世界でもその重要性が声高に叫ばれている‘口腔ケア’。耳になじみがないという方もいらっしゃるだろう。
ひとことで言えば、‘お口の中を清潔に保つこと’だが、毎日歯を磨いて清潔にしているという方でも、定期的に歯科検診を受けている方はどのくらいいらっしゃるだろうか。残念ながら、決してその数は多いとは言えない。
口腔がんで亡くなる患者は年々急増傾向にあり、1990年から2005年にかけて死亡者数は男女共に倍増、男性4000人、女性1500人の方が亡くなっている。「検診を受けていれば、事前に防げた例は少なくない」と医療法人社団秀真会の玉置理事長。

そもそも秀真会ががん患者さんの口腔ケアに着目するようになったのは、玉置理事長のお父さまががんを発症したことがきっかけ。玉置理事長が歯科医師であることを知ると、父親が入院する病院の看護師から、どのように口腔ケアをしたらよいのかわからないと質問攻めにあった。

口腔がんに限らず、がん患者の口腔ケアはまだまだ未開拓な部分であると痛感した。そこで、対がん協会と協働し、啓発のためのイベントを開始。2009年は、「おいしく食べられる口をつくろう」をテーマに、歯科衛生士による歯磨き講習会、歯科医師による無料歯科検診に加え、専門歯科医師によるがん患者さんのための無料相談などを行った。今年で3回目を迎えたが、参加者の評判は上々だ。食べるという日常的な行為と密着しているにも関わらず、見落とされがちな歯の健康について考える場づくりに一役買っている。

口腔ケアは、抗がん剤や放射線治療の副作用対策にも効果大

実は、がん患者さんが命を落とす直接的な原因は誤嚥性肺炎であることが少なくない。体力が弱ったがん患者さんにとって肺炎は致命的だが、嚥下機能が低下し、口腔内の細菌が肺に入って肺炎を起こしてしまうケースは後を断たない。

また、放射線や抗がん剤治療により唾液腺がダメージを受けると、唾液が出なくなる。唾液には汚れを洗い流す作用があるため、唾液が出ないと、どうしても汚れが歯や歯茎にたまり、虫歯や歯周病になりやすい。カンジタというカビが口の中に増殖し、舌にヒリヒリとした痛みや味覚症状が生じることもある。

酷い口内炎もがん患者さんを悩ませる症状のひとつだ。副作用として嘔気嘔吐の症状があるところに、口腔内が荒れれば、食事はさらに喉を通らなくなる。口から食べられなくなると、衰弱のスピードは速い。患者さんにとって食べることは第一。食べることに困難を抱えるようになると体力的にはもちろん、精神的にも落ち込んでくる。治療が継続できなくなるケースも少なくない。

さらには、唾液が出ないために口が渇いて、寝ている間に舌が上あごにくっついて苦しくなったり、話しづらくなったり、といった症状も生じてくる。食べることや話すことがスムーズになれば、患者さんのQOL向上につながる。
こうした側面から、がん医療における口腔ケアへの関心は飛躍的に高まりつつある。

しかしながら、がん医療の現場では口腔ケアにまで配慮が行き届いているとはまだまだ言いがたい。 たとえば、口腔がんの場合には術前から専門医が柔軟に対応していると考えられるが、それでも歯科医師の免許を持つドクターが治療をする場合と、耳鼻咽喉科や頭頸科の医師が治療をする場合では異なる。

秀真会以前は、大学病院のがん医療の現場で、口腔がんやがん患者さんの口腔ケアに携わってきた鎌谷宇明先生によれば、
「できれば、歯科医師のいる病院で治療を受けてほしい。とくに放射線治療の場合は術前から口腔ケアを行わないと、口の中が荒れて痛くなってからでは遅いんです。治療開始前から歯科医師の口腔ケアを受けていただくのがベストだと思います。
抗がん剤の副作用でも唾液腺はかなりダメージを受けますが、そうした事実は医療者間でもあまり知られていない。脱毛や嘔吐は目に見えて明らかですし、インパクトも強いので、どうしてもそちらに目が行ってしまいがちです。健常者でも歯ブラシ一本でまったく異なりますが、ましてやがん患者さんのように抵抗力が落ちている方にとって口腔ケアは極めて重要です」。

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