病院選択

【掲載日】2008年06月01日
【更新日】2009年10月30日

前村 聰さん
日本経済新聞記者

がん治療を受ける病院の選び方

「どこの病院で治療を受けるのがいいのでしょうか」。読者から最も多く寄せられる質問です。がん治療を行っている全国の病院の5年生存率を調べた初の調査「がん治療の実力病院」 *1) を連載、出版した理由も、この問いに答えたいという思いからでした。

取材を通して痛感したのは、「がんの種類・進行度だけでなく、治療する医師の考え方で治療方法が大きく異なる場合がある」ということです。そのため、できるだけ多くの情報を集め、自分に適した医師、医療機関を見つける努力が不可欠です。

病院選びの基本は、がんと診断した主治医に病状を詳しく説明してもらい、自分の状態を十分に理解することです。診断直後は動揺してしまい、正確に理解できないかもしれません。家族などにも同席してもらうといいと思います。

次に、自分の病状に対する治療方法について情報を集めます。国立がんセンターが運営している「がん対策情報センター」 *2) には、患者向けの情報がわかりやすくまとまっています。

より専門的な情報は、各学会のガイドラインが役立ちます。財団法人「日本医療機能評価機構」の医療情報サービス「Minds(マインズ)」 *3) には、こうしたガイドラインが多く掲載されています。難解なガイドラインもまだ多いのですが、日本胃癌学会のように患者向けのわかりやすいガイドラインも増えています。「自分のがんの種類・進行度に対する現時点での標準的な治療は何か」を客観的に確認し、不明な点や疑問があれば、がんと診断した最初の医師に再び尋ねましょう。

答えは一つではなく、「名医」がすべて解決するわけではない――

最初の医師の説明を十分に理解し、治療方法に納得できれば、その医療機関で治療を受けることになります。しかし、さらに自分で調べた情報から異なる治療方法について知りたい場合は、ほかの医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を活用しましょう。「なかなか言い出しにくい」という声もよく聞きます。しかし、セカンドオピニオンでは新たに検査はしないため、最初の診断時の画像データや診断書などの情報は必須です。「ほかの医師の説明も聞いた上で、納得して治療を受けてほしい」という医師も増えています。またセカンドオピニオン用に医療機関が患者に医療情報を提供するための費用は保険の適用対象になっています。遠慮せずに「ほかの医師の意見も聞きたいので、そのための医療情報を提供してください」と伝えましょう。

セカンドオピニオンの際に役立つのは、いわゆる「病院ランキング本」です。大切なのは「一つのランキング本に頼らない」ことです。一年間の手術件数を基準にしたり、5年生存率や手術死亡率など治療成績で比較したり、緩和医療の治療体制に着目したりなど、医療機関を比較する物差しはたくさんあるからです。とくに同じ病状でも、例えば乳がんの乳房温存手術の割合や、胃がんや大腸がんの腹腔鏡・内視鏡手術の割合などは、医療機関によって大きく異なります。こうした情報を読み比べ、できれば最初の医師と異なる方針の医療機関を見つけ、「セカンドオピニオンを聞きたい」と事前に伝えた上で、受診しましょう。

治療が始まると、抗がん剤との組み合わせなどもあり、変更が難しいケースは少なくありません。がんは心臓病や脳卒中に較べると、治療方針を決定するまでに時間的な猶予があります。答えは1つではなく、「名医」がすべて解決するわけではありません。納得のいく説明をしてくれる医師、医療機関を選びましょう。

パレットメモ

がんのランキング本はさまざまな出版社から出ています。 いくつかの本を見比べ、治療を受ける病院を慎重に選びましょう。大手新聞社が出しているランキング本をご紹介します。

前村 聡 さん

前村 聡(まえむら・あきら)

日本経済新聞記者

一橋大学社会学部卒業、日本経済新聞社入社。大阪社会部で大阪府警、司法記者クラブなどを担当。
2001年3月から東京社会部で厚生労働省記者クラブを担当。
2004年3月から遊軍の医療班キャップとして病院の治療成績の調査など実施。
2004年10月から東京大学医療政策人材養成講座(1期生)を受講、修了。
2007年3月から法務報道部(社会部兼務)キャップ(現職)。
2007年には医療の質・安全学会第2回学術集会「新しい医療のかたち」選考委員を務めた。
共著に『医療再生~ドキュメント「危機」の現場』(2003年1月)、『日経病院ランキング』(2004年6月)、『がん治療の実力病院』(2005年4月)、『心臓病治療の実力病院』(2006年4月)、『脳疾患治療の実力病院』(2007年4月)など。

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